近年、退職代行サービスの利用者が増加していますが、その背景には、社員が自力で円満に退職することが困難な状況に置かれている会社側の特徴が見え隠れします。
この記事では、退職代行サービスを使われる会社に頻繁に見られる典型的な特徴をまとめ、その背後にある企業文化や労働環境について考察します。
特徴１：強引な引き止めが横行する「辞めさせない文化」
社員が退職の意思を伝えても、人手不足や会社の都合を理由に、感情的な訴えかけや条件の提示によって強引に引き止めようとする企業文化が根強い会社では、退職代行サービスが利用されやすい傾向があります。
- 「今辞められたら困る」が口癖: 人手不足を理由に、形式的な手続きを進めようとしない。
- 感情的な引き止め:「君には期待している」「今まで育ててきたのに」といった言葉で罪悪感を煽る。
- 条件の提示による引き延ばし:昇給やより高い役職を提示して、退職を思いとどまらせようとする。
このような会社では、社員は精神的な負担を感じながら退職交渉を行うことを避け、第三者の仲介を求めることがあります。
特徴２：ハラスメントが蔓延し、安全な離職が困難な環境
パワハラ、セクハラ、モラハラといったハラスメントが蔓延している職場では、被害者が加害者である上司や人事担当者に直接退職を申し出ることに強い抵抗感や恐怖心を抱きます。安全に、そして一切接触せずに離職するために、退職代行サービスが最後の砦となります。
- 上司からの暴言や嫌がらせが常態化: 精神的な攻撃だけでなく、具体的な脅威を感じる場合も。
- 企業文化としてハラスメントが黙認されている:周囲に相談しても問題が解決しない、あるいは企業文化としてハラスメントが普通となっている。
- 人事部がハラスメントに対して非効果的: 相談しても真剣に取り合ってくれない、あるいは加害者と結託している場合も。
このような環境では、社員は自分自身の精神的な安全を第一に考え、第三者の仲介を選択します。
特徴３：形式主義に固執し、正当な理由での退職でも認めない企業文化
形式主義を過度に重視し、正当な理由による退職であっても、形式的な手続きに固執したり、形式的な理由をつけて退職を認めようとしない企業文化も、退職代行サービスが利用される要因となります。
- 「就業規則に則る」の一点張り: 個々の事情を考慮せず、形式的な規則を盾に退職を引き延ばそうとする。
- 後任者が見つかるまで退職を認めない: 人手不足を理由に、形式的な手続きを進めず、社員を感情的に拘束しようとする。
- 形式的な退職理由以外認めない:「一身上の都合」以外の具体的な退職理由を強要し、形式的な手続きを複雑化させる。
このような会社では、社員は形式的な手続きに疲弊し、プロの仲介によって合理的な解決を求めます。
特徴４：賃金や労働条件に不満が慢性的に存在する
賃金が低い、長時間労働が常態化 、有給休暇が取得しにくいなど、労働条件に慢性的な不満が蔓延している会社では、社員のエンゲージメントが低下し、離職希望が高まります。しかし、会社側がこれらの問題を改善しようとしない場合、社員は自力での交渉に絶望し、退職代行サービスを利用して速やかな離職を選択することがあります。
- 低賃金が改善されない:従業員の貢献に見合った賃金が支払われない。
- サービス残業や休日出勤が当たり前: 形式的な支払いがされないまま、長時間労働が常態化している。
- 有給休暇の取得に暗黙の了解がある:形式的には制度があっても、実際には取得しにくい雰囲気がある。
このような会社では、社員は自分の労働に見合った対価や健康的な労働条件を求めて転職をしたいと考え、その合理的な手段として退職代行サービスを利用します。
まとめ：負の企業文化が退職代行利用を加速させる
退職代行サービスを使われる会社には、強引な引き止め、ハラスメントの黙認、形式主義への固執、 慢性的な不満といった、社員の精神的・身体的な健康やキャリア形成を阻害する負の企業文化が共通して見られます。
退職代行サービスの利用者の増加は、そのような企業文化に対する、社員たちの静かなアンチテーゼとも言えるでしょう。